イメージを変える商法
最近は、日本でも環境保護への取り組みや、貧困の解消などの社会貢献をしているとうたっている企業が増えてきました。
企業の公式サイトを見ても、「私たちは、このような形で社会貢献をしています」ということを写真入りでアピールしているところも多いです。
このように、ことさらに企業が「社会貢献をしている」というイメージを強調するのは、「社会貢献をしている企業には、多少割高な商品を販売していたとしてもお金を払ってあげよう」という心理が消費者の中にあるからなのだそうです。
つまり、企業にとって「社会貢献」とは、自社の商品のイメージを向上させ、より売り上げをアップさせるための一種の戦略であり、ビジネスモデルでもあります。
また、社会貢献をテーマにしたビジネスモデルを企業が展開する背景には、消費者の間で、少しのことでも社会貢献をしたいという気持ちが高まってきていることも挙げられます。
以前テレビで寄付金付きの商品が多くの消費者に好まれているというニュースが報じられましたが、こういった消費者の傾向も、社会貢献を自社や自社の商品のイメージアップにつなげるビジネスモデルの広がりに拍車をかけているのです。
また、東日本大震災後に多く登場している東北旅行ツアーや東北のグルメを楽しもうという商品なども、東北の復興を助けようという消費者の心理をつかんだ商法だといえるでしょう。
マーケティング活動
ボランティアとはいうものの、企業が謳っている社会貢献と、本当に社会に貢献するボランティアとはやはり方向が違います。
企業が行う社会貢献は、あくまでも、自社に対する実利を期待した社会貢献であるからです。
企業が社会貢献をする目的は、あくまでも、その企業のイメージや知名度の向上、そして、その企業の商品の売り上げのアップのためであり、彼らの社会貢献は「下心=目的のある善意」なのです。
このような、自社の事業と関連している社会貢献活動を、欧米では、コーズマーケティング(Cause Related Marketing:CRM)と呼んでいます。
コーズマーケティングには様々な例があり、特に欧米の企業は盛んに行っています。
あるアメリカの化粧品メーカーでは、女性の乳がんの早期発見のためのピンクリボン運動に参加しているそうです。
またある映画俳優が設立した無添加サラダドレッシングを販売する会社では、その売り上げの全額にあたる約225億円を慈善団体に寄付しました。
この思い切った行為が、消費者から絶大な支持を得たそうです。
コーズマーケティングを積極的に行っている企業は、本来広告宣伝費に回す費用で、それらを行っていることが多いそうです。
コーズマーケティングの効果は、その浸透力にあります。
このような社会に貢献する活動を積極的に行っていると、消費者はその企業を優良で善良な企業としてのイメージで見てくれ、よりその企業の名前が人々の間に浸透しやすいのです。
このような良い宣伝効果を得られるのならば、テレビや新聞、雑誌などのメディアに高い広告費を払って宣伝する必要などないというわけです。