拡大を続けるeスポーツ市場
eスポーツは、対戦型のコンピューターゲームをスポーツ競技として捉える新しいジャンルとして、近年急速に成長しています。
国内の市場規模は2023年に約146.85億円に到達し、2025年には200億円に迫る勢いで拡大中です。とくに2022年から2023年にかけては前年比117%の成長が確認されており、オンライン大会やオフラインイベントの回復がその要因となっています。
世界に目を向けると、その規模はさらに大きく、2025年には約6億5,000万ドル、2032年には約20億7,000万ドルへ成長するとの予測もあります。
こうした動きを背景に、大手IT企業やスポンサー企業がeスポーツ関連事業へ投資を進めており、選手・チーム・大会運営など、各分野での産業化が本格化しつつあります。
収益構造と運営のしくみ
eスポーツ業界の主な収益源はスポンサー収入です。世界的に見ると全体の約4割をスポンサーが占め、広告収入やメディア権利料、配信プラットフォームでの課金などがそれに続きます。
とくにスポンサーとの連携は、ゲームタイトルごとに収益性が左右される要因でもあり、タイトル依存の構造が色濃く出ています。
国内ではイベント開催による収入も存在感を増しており、2023年は大会運営や協賛が全体の約37.6%を占めました。
また、プロチームの収益も企業スポンサーや物販に支えられており、プレイヤーの知名度やSNSでの発信力が重要な経営資源となっています。
一方、ゲーム開発会社と大会主催者との利害調整も重要なテーマです。大会の独自開催には知的財産権の問題が伴うため、ライセンスの取得や収益分配の設計など、各プレイヤーの連携が求められています。
課題と今後の展望
成長の一方で、いくつかの課題も浮き彫りになっています。まず、黒字化の難しさです。プロチームは選手の給与や遠征費、大会運営側も配信設備や制作費の負担が大きく、安定収益を確保するのが難しい状況が続いています。
また、日本に特有の法制度上の制約も課題です。ゲーム大会の賞金には景品表示法が関係し、一般的には金額の上限が10万円に抑えられるケースもあります。ただし、賞金が「仕事の報酬等」と認められる場合や、プロライセンス制度を活用することで、この制限の適用外となるケースもあります。
さらに、選手の健康面や倫理的問題も無視できません。長時間のプレイにより姿勢の悪化や視力の低下を訴える若年層もおり、最近ではドーピング問題への対応も求められています。
これらの課題を乗り越えるには、持続可能なビジネスモデルの確立と、教育や医療分野との連携、さらには法制度の整備が欠かせません。